Q9.監事から辞任届の提出があり、辞めてしまいましたが、後任者が見つかりません。この場合どうなってしまうのでしょうか?
A9.定款で監事の定数をどのように定めているかにもよりますが、通常、監事1名としている場合を考えると、後任者が見つかるまで辞任できません。
医療法第46条の5第1項「医療法人には、役員として、理事3人以上及び監事1人以上を置かなければならない。」とあります。
さらに、定款において、役員の任期について、「任期満了後といえども、後任者が就任するまでは、その職務を行うものとする。」とあるケースがほとんどかと思います。
つまり、法律で1名置け、と言っていて、定款で、後任者が見つかるまで職務をしなさい、と言っているわけです。
ここで、定款の文言で『任期満了後といえども』とあり、”辞任”は、”任期満了”ではないではないか?!という疑問が残ります。
ここからは現時点では解釈上の話になってしまいますが、要するに、任期満了でさえ、後任者が見つかるまでは、監事としての職務を行いなさい、と言っているのだから、辞任であれば、なおさら残りますよ、という趣旨に捉えることになります。
では、定款にこの定めがない場合はどうなるか?
おそらく全国のどの医療法人の定款にもほぼ99%入っていると思うのですが、定めがなくても辞められないと解釈するのが通常です。
なんせ法律で1名置け、と言っているのですから。
では、辞任日はいつになるのか?
例えば、現任の監事から3月31日付けで辞任する旨の辞任届が出たとします。
後任者が見つかり、その就任の決議をし、新任の監事が就任を承諾したのが、6月1日だったとします。
この場合、前監事の辞任の意思は新監事が就任したときに、はじめて条件が成就することになるので、3月31日となります。つまり、遡って辞任することになります。
というわけで、回答Aにおいて「辞任できない」と言ったのは、対外的には辞めたことにならない(=つまり、実質的に辞められない)、ということです。”権利義務”といって、後任者が見つかるまで監事としての職務を負っているからです。
医療法人の理事(理事長を除く)や監事は登記しないので、とてもわかりにくいのですが、取り扱いは上記のようになっています。
もし、今回のケースで、いわゆる会社法上の取締役等のように、医療法人の監事の登記ができるものと便宜上仮定すると、新任の監事が見つかるまで辞任の登記ができない、というわけです。このことを仮定で考えると少しわかりやすくなるかと思います。
ちなみに、、、
平成28年9月に改正した新しい医療法では、この「権利義務」の文言がモデル定款に盛り込まれていますので紛れがなくなります。
なお、理事についても同様ですが、理事の場合は定款で定めた定数に幅がありますので、あまり起きない事象かと思います。
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